化け物は観察を終えると、また素早く攻撃態勢に入る。

そしてまた檜山さんに向かって走り出した。



檜山さんはぐっと刀を握りしめる。

複数の手で跳躍して再び襲いかかってきた化け物を、今度は擦れ擦れで躱しながら胴体部分に切り込んだ。


化け物の体は思いの外固く、其の切れた部分からは少量の体液しか出なかった。

そしてまた檜山さんに攻撃を仕掛ける。



化け物は強弱が分かるようで、私には見向きもしない。

そこから暫くの間応戦が続き、私は見ることしか出来なかった。

下手に入ると足で纏いになるどころか、二人とも殺されかねない。


ギリギリと拳を握り、掌に爪が食い込む。


何か、何かできないの…っ!?


見るからに両者の形勢の優劣は明らかだった。

檜山さんは血だらけになりながら必死に戦っている。

そして私に向かって怒鳴り上げた。



「―――早くいけ!!死にてぇのかっ!……もうもたねぇんだよ!!」

言い終わった瞬間檜山さんの体が蹌踉めいた。

化け物はその隙を見逃さない。


素早く距離を縮め、押し倒す。そして、止めを刺そうと鋭く尖らせた肢体を振り上げた。


「―――っく。」


それに対し檜山さんは必死に抵抗するが、もう体力が底を尽きたようで化け物を制すことが出来なかった。






化け物が檜山さんの喉元を突き刺そうとする瞬間がやけにゆっくりとした動作で見えた。