人形(ひとがた)は四躰全てをバラバラに動かしながら、胴体をビクビクと跳ねさせる。


彼女対して必死に抵抗しているようだ。

しかし、彼女に持たれた足の部分だけはびくともせず、固定されたままである。




暫くそれが続くと、女の人はピタリ歩くのを止め、引き摺っているものに振り返った。

其の顔はやはりあの時に会ったのと同じだった。



しかし、あの時には殆ど気付かなかった禍々しいものが今はヒシヒシと感じられる。

今思い返せば、あの時も其のような感じが少しあったのではないだろうか。

白昼に出逢ったために緩和されていただけなのかもしれない。




女の人は人の形のものが暴れているのを少しの間眺めると、持っていた足をするりと離した。


人の形のものは開放されると、四躰全てを使って這い蹲りながら其処から離れようとする。



其れを見た女の人は唇の端を上げて綺麗な弧を描くと、徐に何処から出したかもわからない刀を鞘から抜いた。


ゆっくりと人の形のものに近づくと、



ザクッ



と胴体の部分を貫き、そのまま刀を地面に刺した。




ギェェィェ――――ッ




人形のものはその場に固定されて進むことが出来ず、じたばたとのた打ち回る。

刺された部位からは大量に血が噴き出し、人形自身を真っ赤に染めていく。


その様子を至極興味深そうに見つめた後、再び刀の柄に手を伸ばし一気に引き抜く。

ブシャッと音がして、人形がよろめいた。


そして、人形のものが進む隙も与えず一突きまた一突きと、何度も何度も突き刺していく。

次第に人形は大量の血や内臓を出しながら原型を留めなくなるくらいにまで崩れていく。



ザクッ



ザクッ



その光景を目の当たりにして息をするのも忘れそうになる。
呆然とただ見ることしかできない。



全く動かなくなってもなお刺し続けて肉塊が液状になってくると、女の人は飽きたとでも言うように急にその行為をピタリとやめた。