――――7月上旬

ジリジリと太陽が照りつけ、校舎の窓から見えるグラウンドが熱気でゆらゆらと揺れて見えるこの季節は、皆がもうすぐ来る長期休暇を待ち遠しく思う。

私もそのうちの一人だった。

ただ、クラスの生徒が休暇中他県や外国に遊びにいく予定を楽しそうに話している中、まだどこかに行く予定もなく、暇を持て余すことになりそうで少し憂鬱に思っていた。

そんな時、親友の由実が言った。

――――そうだ、あたしのおばあちゃん家に行かない?

詳しく聞いてみると、由実の祖父は3年前に他界し、今は山奥に祖母一人で住んでいるらしい。

そこでの暮らしに不自由は無いが、祖母は活発的な方だそうで7月下旬から8月上旬にかけてツアーで外国に行く予定があり、その間家を空けるのだという。

そこで祖母に頼まれたのだそうだ、『貴重品の管理は出来ているが、家を暫く空けるのには不安があるから、少し様子を見に来てほしい』と。

――――別に家族と行っても良いけど、折角の夏休みだから。どうせなら大好きな希咲ちゃんとぷち旅行したいな。

そう由実がはにかんで言うから、そして、願ってもない予定の申し出だったから、私は二つ返事でその提案に乗った。





…………思えばそれが始まりだったかもしれない。


【prologue -end-】