不器用な恋模様




そして正門を抜けた。


「氷屶くん」


「……っ!!」



俺を呼ぶ声に、俺は驚いて
声の主を見た。

あまりにも柔らかく、そして
聞き覚えのある声に俺は相手を見なくても確証した。



「栞……なんで?」


「待ちたかったの。どうしても……ダメだった?」



悲しそうに尋ねる栞に
「別に」と素っ気なく答えた。



だって、
待ってるなんて……。

期待はしたけど。



そんな事を思いながら
栞と並んで帰った。