「俺たち、結婚することになった」



溝口慶太は、少し顔を赤らめながらも、堂々と言った。


その弟の溝口亮太の部屋で3人が正座する形だ。


「もう付き合って‥5年くらいたちます。
俺もこいつも今年で大学卒業なわけでして‥そろそろかなぁ、と‥」


「なに改まってんの弟の前で」

亮太がそう言うと、場がだいぶ和んだ。



「ハハハッなんだか緊張しちゃってな、
まだ親父にも言ってないんだ」


「え、俺が一番先?」


「ああ、こいつが、亮太くんに先にっていうから。
へんな話だよまったく」


おまえもなんか言えよ
と、慶太言われた女性、前園林檎は口を開く。



「亮太くんには、たくさんお世話になったから
これからも、どうぞ宜しく」

深々と頭を下げる彼女。


「なんか調子くるうな、えへへ」

「それはこっちの台詞」


慶太と林檎は、相思相愛だった。
2人は幸せいっぱいだった、希望しか見えていない。



玄関が開く音とともに、親が2人そろって帰宅した様子だ。


「あっ、帰ってきたみたい」


林檎は立ち上がる。


「慶太さん、行こう」

「なんか緊張するな‥」

「そう?わたしは、亮太くんに挨拶したし、緊張解けちゃったよ」

「そうか、ならよかった。じゃあ、いってくる」


慶太は立ち上がると、亮太にそう言った。


慶太はありがとう、という。


「亮太くん、本当にありがとう」

「こんな兄貴だけど、どうかよろしく」

うん、といい、林檎は微笑む。

2人は亮太の部屋を出た。

階段を静かに降りる音を聞きながら、亮太はふう、と息をもらす。




林檎

という名前は
彼女にぴったりだった


どこまでも透明感のある白い肌は、ほんのり赤い頬を際立たせた。



結婚
お互いを人生のパートナーとする
すごい儀式だ

2人はこれから
お互いだけを見つめ
2人で歩いていく





さっきより寒くなった気がした

亮太はカーテンを開けた。

外は雪がちらついていた。