「まあ、信じるか信じないかはヒロの勝手だ」

あごをつかんでいた指が離れたので、千広はホッとして目を開けた。

間近にあったはずの陽平の顔は、離れていた。

「そもそも、俺は赤い糸そのものの話を信じてない」

そう言った陽平の顔は、どこか寂しそうだった。

信じていない?

千広は耳を疑った。

「本当に首輪みたいに離れなかったら、離婚するカップルなんているまい」

皮肉を言った後、陽平は腰をあげた。

「…じゃあ、どうして赤い糸の話なんかしたんですか?」

千広は聞いた。

信じていないんだったらしなきゃいいのに。

呆れて皮肉を言うんだったら、話に出さなきゃいいのに。

その質問に陽平は息を吐くと、
「さあな」

一言だけ答えると、背中を見せた。