「やっぱりダメだよね、犯罪は」

そう呟いて息を吐いた園子に、千広は苦笑いをするしかない。

今はバイトの時間である。

本来ならニコニコと笑うのが当たり前だが、千広は苦笑いしかできなかった。

幸い今は客がいないからよかったものの、千広の顔はこれから葬式に行くような暗い顔をしている。

園子は犯罪を犯してまで、自分と陽平を引き離そうとしている。

役所ならではの権力なんて簡単に言ってるけど、やっていることは犯罪である。

「やっぱり、自分が話をつけた方がいいかも」

千広は息を吐いた。

相手は財閥の御曹司、話にならないくらいの男である。

千広は店内を見回すと、そこに誰もいないことを確認した。

確認した後で千広は電話の子機に手を伸ばしす、なれた指先で電話番号を打った。