そんなことも知らなかったのかと言うように、陽平は笑った。

忘れてた、離婚したらバツが必ずつくと言うことに。

「そうなったら、本当に結婚する時に困るでしょ?

バツがついてたら相手は見事に幻滅だよ。

100年の恋だって、あっという間に冷え冷えだよ」

勝ち誇ったように笑っている陽平に対して、千広はムカつく以外の感情しか浮かばない。

信頼問題も盾に出してくるとは、さすが財閥の御曹司である。

しかし、庶民である自分も負けてはいられない。

「離婚してください!」

千広は叫んだ。

ここで負けたらプライドが許さない。

「あたしと離婚してください!」

一字一句間違えることなく、陽平の目を見つめながら言った。