「周陽平、27歳。

日本の経済界を代表する『周財閥』の御曹司だ。

家族は、両親と5つ下の妹が1人。

会社は父親が社長、母親が副社長として経営している。

妹は去年の冬に結婚、お相手は『陣内コーポレーション』社長秘書の藤堂伸一郎だ。

現在、周陽平は小田切紅花が経営している会社でデザイナーとして働いている」

砂野が彼の経歴を読みあげた。

「デザイナー?」

千広は資料から顔をあげた。

財閥の御曹司なのにデザイナーだなんて、おかしなものである。

そんな千広の質問に答えるように、
「アクセサリーのデザインを担当してる」
と、砂野が話を続けた。

「へぇ…」

千広は資料に顔を戻した。

正直、強気なオーラ漂う彼から全く想像できなかった。

アクセサリーのデザイナー――そんな雰囲気は、どこにも見当たらない。