嘘婚―ウソコン―

戸惑っている千広に、
「私は、あなたの顔を見にきただけだから」

小田切が続けて言った。

「えっ…」

顔を見にきただけ?

千広はそれが何を意味しているのかよくわからなかった。

「あなたも座ったら?」

自分の向かい側にある椅子を指差すと、小田切が言った。

「あ…はい…」

小田切に言われた通り、千広は椅子に腰を下ろした。

「周くんから、私のこと聞いてた?」

椅子に座ったとたん、小田切が話を切り出した。

「…デザイナーの仕事をしている人だって、言っていました」

そう返した千広に、
「そう」

小田切は返事しただけだった。

「周くんらしいわね」

ふうっと、小田切は息を吐いた。