嘘婚―ウソコン―

(小田切紅花って…前に周さんが話してた人だよね?)

千広は信じられなかった。

まさか、目の前に陽平が前に話していた人物がいるなんて…!

「どうしたの?」

物珍しそうに自分を見つめる千広に、小田切は声をかけた。

彼女に話しかけられた千広は、自分が小田切を見つめていたことに気づいた。

「――あっ…いや、その…」

うまく話すことができない。

「あ、周さんは…その…」

自分は一体何を言いたいのだろう?

ここにいない陽平の話を彼女に切り出したって、意味がないのに。

「周くんはフランスでしょ?」

「は、はい…」

彼女の問いに、千広はうなずいた。

沈黙。

先に破ったのは、
「あがってもいいかしら?」

小田切の方だった。