嘘婚―ウソコン―

彼女はかぶっていたハットをとると、
「初めまして…の方が正解かしらね?」

続けて言った。

ツヤのある黒髪のショートカットが太陽に照らされて、キラキラと輝いていた。

「ああ、はい…」

千広はうなずいた。

よくよく考えて見れば彼女の言う通り、会うのは今日が初めてだ。

「私の名前、わかる?」

彼女が言った。

「えっ…」

千広は戸惑った。

さっきも言った通り、彼女とは初対面だ。

当然、彼女の名前はわからない。

「…ごめんなさい。

どちら様でしょうか?」

呟くように、千広は彼女に尋ねた。

彼女はニコッと笑って、
「小田切紅花」
と、言った。

その名前を聞いた時、千広は驚いた。

その名前に、聞き覚えがあったからだ。