「――何でいつもそうなんですか?」

呟くように言った千広に、陽平は視線を向けた。

千広の悲しそうな顔と視線がぶつかった。

何で悲しそうな顔をしているんだ?

彼女が最も望んでいたことをしただけなのに…。

見つめていたら、千広の唇が動いた。

「――何でいつも、あなたはそうなんですか?

自分の目的を果たすためにあたしの戸籍を盗んで、勝手に夫婦にして…」

言えば言うほど、声が震える。

言えば言うほど、目頭が熱くなる。

でも、陽平の前では泣きたくない。

今にも泣き出しそうな千広に戸惑いながら陽平は、
「慰謝料なら、それくらい払うから。

慰謝料以外の金も欲しいんだったら…」
と、声をかける。

「そうじゃなくて!」

叫ぶように千広は言うと、陽平の手から封筒を奪った。

ビリッ!