「相手を苦しめたいから、夫婦になってください。

こんなことを言って、誰が夫婦になってくれると思うんだ。

そうだろ?

そう言うことだろう?」

陽平は振り返らなかった。

彼は、何を抱えているのだろうか?

「俺がこんなことを言ったら、ヒロは俺と夫婦になってくれたか?」

陽平が話を続けている

抱えているなら、教えて欲しい。

少しでも負担を和らぐことができるなら。

一緒に負担を背負うことができるなら。

「そう言うことだろ?」

陽平が背中を向けたまま歩き出した。

「周さん!」

千広が呼んでも時すでに遅しだった。

ベルが、陽平が出て行ったことを告げる。

千広は1万円札を地面にたたきつけた。