何だか、あまり見つめてはいけないような気がしたからだ。

そのうえ、心がザワつき始めていた。

「仕事関係の人かも知れない…」

ザワつき始めた心に、千広はそう言い聞かせた。

それか、陽平の好きな芸能人か。

芸能人を携帯電話の待ち受け画面にすることくらい、当たり前だ。

だから、自分が気にする必要なんてない。

なのに、
「気にする必要なんてないのに…」

自分たちの関係は、紙のうえでの関係だ。

紙のうえで繋がっていると言っても過言ではない。

そもそも、自分たちは夫婦じゃない。

それは、形だけだ。

形だけで成り立っている夫婦関係だ。