スーッと、寝息を立てて陽平は寝ていた。

あれだけ飲んだら、眠りたくなるものなのかも知れない。

千広は心の中で呟いた後、窓の外に視線を向けた。

陽平は眠っていても、街は眠らないらしい。

移り変わって行く景色に、千広は息を吐いた。

いろいろあり過ぎて、疲れてしまった。

本当に陽平中心で人生が動いているんじゃないかと思った。

その中で、陽平は何を思っているのだろうか?

人を振り回すことに、何の罪悪感もないのだろうか?

陽平の寝顔を見ながら千広は思った。


タクシーが目的地に到着した。

「毎度あり」

運転手にタクシー代を払うと、千広は陽平を連れて降りた。

「お嬢ちゃん、大丈夫?」

そんな千広に、運転手が心配そうな顔で聞いてきた。