キャバクラなんて、ほとんど知らないに近い。

でも、自分はそこにいる。

それもこれも、陽平のせいだ。

陽平に戸籍を盗まれてからの自分の人生は、目が回るほど変わったような気がする。

陽平は財閥の御曹司――そんな彼に戸籍を盗まれた。

辞めざるを得なくなっていたバイト先も、陽平が自ら働くと言って場所を提供してくれた。

千広は、横目で陽平に視線を向けた。

水割りを手に、陽平はユメとハートと一緒に話をしている。

彼に対するイメージが変わったのかと聞かれれば、それはわからない。

飄々としていて、肝心なところはうまくごまかされて、煙に巻かれてしまう。

自分の中の陽平のイメージは、相も変わらず。

けど――今の自分の人生は、彼を中心にして回っているのではないかと思うのは事実である。