千広は入るところがない。

右腕候補って、さっきからそればっかりである。

働くことになったと言えばそうなのだが、右腕になると言った覚えはない。

「それで、九条先生はどうしたの?

あの人を待たせて、俺の相手をしていいの?」

思い出したように言った陽平に、
「直なら、今さっき帰ったわ。

あたしも終わったらすぐに帰るつもり」

ハートは答えた。

スナオ――おそらく、陽平がさっきも今も言っていた“九条先生”と言う人の下の名前だろう。

また新たな登場人物が増えたなと、千広は呟いた。

と言うよりも、陽平が増やしているでは?

そう思いながら、千広は陽平に視線を向けた。