「お前だって欲しいものくらいあるだろ?」

めまいを感じた千広に、追い打ちをかけるように陽平が言った。

あると言えばあるし、ないと言えばない。

でも時給1万円も必要ない。

「じゃ、決定」

陽平は首を縦に振ってうなずいた。

前言撤回、助けてくれたいい人じゃなくて頭のおかしいヤツだった。

怪訝な顔をしている千広に、
「これからヒマ?」

陽平が聞いた。

「えっ…ヒマ、ですけど?」

千広は答えた。

今度は何だ、時給の次はこの後の話か。

「じゃ、ついてこい」

陽平が背中を見せた。

「はあっ!?」

何のことかと思いながら、千広はそんな彼の背中を追いかけた。