喜んでいる千広に、陽平は離婚届を小さくたたむとジーンズのポケットに収めた。

「…えっ?」

突然の行動に、千広は開いた口がふさがらなかった。

(今、何をしたの…?)

目の前で繰り広げられた陽平の行動に、喜びがまた戸惑いに変わった。

サインを書いたのではなく、小さくたたんでポケットに収めた。

やられたと、千広は思った。

「――とりあえずさ、時間くれない?」

陽平が言った。

千広は何も言うことができなかった。

陽平は空――と言うよりも、月を指差したので、千広はそこに視線を向けた。

今日は満月だと、千広はそんなことを思った。