──春風 愛華

先ほど小柄な男とぶつかり、携帯を落としたらしい。
ドジったな。
「…無愛想」と言われた。
あいつは気づいてるかは分からないが、あたしにはきちんと耳に入ってた。
まぁそんな事はどうでもいい。
家にいては、跡継ぎの話ばかりで煩い。
だから、今暇つぶし場所を探しているんだがいい所がない。
(帰るか)
あたしはそのまま帰路へと着いた。

家に帰ると親父に呼び出された。
母さんがあたしが帰って来た処を狙われ、居間へと連れてかれた。
居間には案の条、親父が正座をして待っている。
あたしは少し間を空け、前にへと座る。
「愛華」
「跡継ぎの話なら──…」
「違う」
「…は?」
「高校に行け」
「………は?」
「行け、強制だ」
「意味が分かんねぇな」
「2学期からでいい。1学期の勉強分は部屋に置いてある。遊んでる暇があるなら勉強しろ」
「あたしはしたい事が──…!」
「高校行きながらしろ。1つの目標に向かうのは良いことだ。だが人生は1度キリだ。他の事もしろ」
「ちょ、待てよ!」
「戻れ、それだけだ」
「なんで勝手に決めてんだ!」
「戻れ」
「話聞け!」
「戻れって言ってるだろが!」
ビクリと身体を震わす。親父の迫力にはまだ負けてしまう自分が情けない。

あたしは居間を出、自分の部屋へと行く。
机の上には本がある。
学校には行かなくちゃ駄目らしい。