──春風 愛華side

しまったな。まさか人に見られるとは。
別にあいつとはもうこれっきりだろう、あまり気にする程じゃないな。
そんな事を思いながら、黒い上着を着ながら歩く。
返り血が付いてるから隠さなければ警察に捕まる。

少し歩き、自分の家が見えてきた。
かなりの広い面積を取ってるあたしの家。
塀に囲まれていて、唯一入れる場所と言えば、正面門と裏門くらい。
正面門は大きな木の門で作られている。
そこを開けば、いつもと変わらない家だ。

和風の家で、門をくぐれば右には大きな池があり、中では何匹かの鯉が泳いでる。
左は少し行った所に道場がある。
この門から家の玄関までには、地に石が埋めている。そしてその両側には石の灯篭がある。
その石を踏みながら行く処はあたしの家の玄関。
戸は右へのスライド式だ。それをスライドさせればすぐに親父の顔が見えた。
「愛華、」
親父が言う事なんて分かっている。
「その話はした筈なんだがな」
「お前はうちを継ぐ気は無いのか!?」
「だからその話はした、つってんだろ!?」

親父が言ってる事。それは親父が今持っている【組】だ。
これは代々続いてるらしく、親父の娘、あたしが継がなければならないらしい。
その【組】の名は”春風一族”。
あたしの苗字だ。春風愛華。
「高校にも行ってないというなら継げばいいものの…」
親父の小言は飽きて、靴を脱ぎ2階にある自分の部屋へと行く。

自分の部屋へと行き、ベッドへと流れ倒れる。

あたしは高校へと行ってない。行っていたら今は高1だ。
行くのが面倒もあるが約束がある。
机にある、1つの写真楯へと目が行く。
あたしはその約束を守りたい。
この人生、命を削ってでも──…