(あ…、まただ)

次の日の朝、学校に行くと、後の席の夏目くんが必死にノートに文字を書き連ねている。

授業は真面目に受けているのに、と不思議に思うと同時に興味も沸いた。


「…」

そのくせ、話すことなんて特に思いつかなくて、スクールバッグを机の脇に掛けて椅子に座る。

(…はぁ、)

「ねぇ」

(今日の予備校何時からLive授業だっけ…。ま、あとで美咲に聞けばいっか…)

「あのさ」

(そういや古典のワークだしたっけ…?数学の課題もまだ終ってなかったような…)

「徳井さん」


呼ばれたことの驚愕に、心臓がびくりと跳ね、裏返った声で「はいっ…?」と返事をした。

うしろを振り返ると、夏目くんは穏やかな微笑を浮かべて、「やっと気付いた」と零す。


「ごめん、私のこと呼んでたんだね?…考え事してて気付かなかった」