「結局…さ。
人の根本ってそこかもしれないな」


健ちゃんのお母さんの病室を出ると、壁に背をくっつけて待っていた悠が言った。


「え?」


意味がわからず、見上げるあたしの肩を悠が抱く。


「親の愛・家族の愛が一番大切ってこと」


「…あっ」


「オレも。
父親が、あそこでオレを見殺しにしていたら。
きっと感情なんて戻らなかった」


「…」


「たとえ感情を戻したとしても。
愛里を束縛して、自分も満たされないだけだから」


「悠っ…」