天使のキス。

確かに
確かに
――キスをした。


はずなのに――…。


実際、あたしの唇には、何も触れず。


「俺にも…
言えたよ?」


その言葉だけを残して、健ちゃんは姿を消した。


「ありがとう、愛里」


遠く。
頭の中に聞こえる健ちゃんの声に――…。


突然見えなくなった姿に――…。


あたしは焦って、悠を振り返った。


「健ちゃんは、どこ!?」


でも、無言で下を向き、首を横に振る悠の姿がその答えで――…


「う…そ…」


あたしの目の前は徐々にぼやけ、そして真っ暗になった。