「えっ!?
嘘っ。
健ちゃん、話の途中で逃げた!?」


急いで振り返った先には…


「もぉ。
悠、驚かせないでよ」


さっきまでと同様、健ちゃんの姿があった。


「ほら、健ちゃん、ちゃんといるじゃん!」


顔だけ悠に向け、手を健ちゃんの方に向けると、その手を悠が乱暴に下ろした。


「愛里。
よく聞け。
何があったのか、オレにはわからないけど――…。
でも、ここには、オレと愛里の二人しかいない」


「…」


「愛里に見えてるアイツは…
佐久間健は…
オレの目には映っていないんだ。
愛里にしか、見えていないんだよ」