その声にじいじがかぶせる。


「さぁ、お嬢さん。
婚約会見を始めましょうか?」


女の子は静かに首を横に振った。


「婚約は…。
婚約は、なかった事にしてください」


ざわつき、誰もが見つめる視線の先で、彼女は言った。


「あたしは――…」


そこでいったん言葉を区切り、彼女はあたしに潤んだ瞳を向けた。


「彼女のようにできなかったと思います。
水嶋社長の心に愛を呼び覚ます事も。
悠くんの心を溶かす事も」


「…」