天使のキス。

「よかったね。
よかったね、健ちゃん」


嬉しくて、健ちゃんの制服の袖を引っ張りながら微笑むあたしに、健ちゃんは目を見開いたままあたしを見下ろした。


「願い事通り、母親は見つかった。
でも…」


あたしを通り越し、遠くを見つめる瞳が揺れ動く。


全然、嬉しそうなそぶりを見せない健ちゃんの様子に、あたしは胸がざわついた。


「でも…、何?」


「でも――…」


健ちゃんは、一瞬瞼を閉じた。


そして次の瞬間見開いた瞳の中には――…


激しい憎悪の炎が瞬いていた。