天使のキス。

「でも、俺が大賞に選ばれる前に、母親は姿を消した」


「…」


「母親を大切に思っていたのは、俺だけだった。
母親にとっては、俺は大切じゃなかった」


「…っ」


「それが、心の底からわかったはずなのに――…
それなのに、そんな母親の名前を、ペンネームにするなんて。
俺、重度のマザコンなのかな?」


健ちゃんは自嘲気味に口の端を歪め、目を閉じた。


「でも、これから一気にケリをつける」


「…?」


「見つけたんだ。
――母親を。
さくら寺のうさぎって…すごいよな?」