天使のキス。

そう言いたいのに。


静かに天井を見つめる健ちゃんの横顔を見ていると、それ以上は言えなくて、あたしは口を閉じた。


そんなあたしの心を見透かしたように、健ちゃんはその体勢のまま、言葉を紡いだ。


「俺。
誰かに、必要とされたかったんだ」


「…?」


「俺が女を傷つけるのは、俺を捨てた母親を恨んでいるから。
俺が女の悩みを聞いてやるのは、単純に、必要とされたかったから」


「…」


「矛盾だらけなのは、わかってる。
でも――…。
父親にも母親にもに捨てられた俺は、俺を必要だと言ってくれる存在が欲しかった」


「…」