天使のキス。

「俺も、ね…。
愛里のお母さんには、よく聞いてもらってたから。
ほら。
テスト勉強のために、愛里の家に泊まってたとき…さ」


「え?
そうなの?
全然知らなかった」


「ん――…
オレ、父親いないし。
母親は、男作って出て行ったし。
俺一人を残して、ね」


「えっ!?」


初めて聞く健ちゃんの家族と、その境遇。


言葉が見当たらず、あたしは「えっ!?」っと、もう一度息を呑んだ。


「ん――…、でも、今の話。
みんなには内緒ね?」


眠りこけるタクの様子を窺って、ウインクをしながら、口の前でひとさし指を立てる健ちゃん。