天使のキス。

「あたし、なら。
亡くしたものの大きさを知ってるあたしなら――…
きっと、どんな困難も乗り越えていける。
この子はね?
後悔してたあたしに、神様がもう一度くれたチャンスかもしれないの」


沙耶は言い終わるとあたしを見上げ、涙の光る顔でにこっと笑った。


「だからね、愛里。
あたし、産む」


その時の沙耶の顔は、今まであたしが見てきた中で、一番素敵な笑顔だった。


飽き性で、彼氏と全然長続きしなくて、すぐに男を変える沙耶ではなく、もうすでに“ママの顔”の沙耶がそこにはいた。


「…沙耶」


あたしは沙耶のその変貌に驚き、そして――…


「うん。
がんばろうね」


守ってあげたいと、心底思った。


沙耶と、沙耶の赤ちゃんを。