天使のキス。

「もう嫌なの。
おろすなんて…。
だから――…
誰がなんと言おうと…
たとえ親に反対されようと…
今回は産むって、あたし、決めたの」


「じゃあ聞くけど。
沙耶ちゃん、お腹の子の父親わかってんの?」


スクっと立ち上がり、冷たい瞳で沙耶を見下ろす健ちゃん。


「それは――…」


言いよどんだ沙耶に、なお一層冷たい瞳を向ける。


「誰の子かわからないのに産むとか。
それ、おまえ、正気で言ってんの?」


健ちゃんを怖いと思った。


声の冷たさが、瞳の冷たさが尋常じゃない。


少しでも沙耶をかばうために、五十嵐くんの名前を出したほうがいいのかな?


その方が、少しは健ちゃんも落ち着くかな?