天使のキス。

健ちゃんなら、何か気の利いたことを言ってくれるんじゃないかと思って。


でも、今日の健ちゃんは、いつもと違った。


「沙耶ちゃん、それって。
もう、おろしたくないって事?」


冷たささえ感じる健ちゃんの言葉。


その内容にも、健ちゃんの声色にも、息をのむ。


それは、あたしでさえ知らなかった沙耶の過去だった。


「沙耶ちゃん。
去年もおろしただろ?」


健ちゃんの言葉は、耳に入ってくるけど理解できず、言葉だけが頭の外をふわふわ飛んでいるようだった。