天使のキス。

沙耶…。


沙耶のあまりに突然の決断に、声の出ないあたしの横で、健ちゃんが下を向きながら何かを呟く。


「…ば?」


その声はとても小さくて。


くぐもっていて、はっきりとは聞こえなかった。


「え?
健ちゃん、何?」


あたしが聞きなおすと、健ちゃんはキツイ眼差しで沙耶を捕らえて、口早に言った。


「やめとけば?」


制服姿のあたし達に注がれる周囲の好奇の目を気にすることなく、その場所に座ったまま、立ち尽くす沙耶を見上げて、健ちゃんは続けた。


「沙耶ちゃんの男好きが、今後直るとは思えない。
産んでも、邪魔になったら捨てるんだろ?
そんなの、赤ん坊には迷惑な話だ。
だったら、最初からやめとけよ」