天使のキス。

あたしの視線に気づいて、沙耶は顔を背け、あたしに背中を見せた。


でも、沙耶。


どっちにしても、このまま放っておけないよ?


ちゃんと病院に行こうよぉ。


どうしよう。


無理やりにでも、病院に連れて行ったほうが――…


あたしがこぶしを握りしめ、教室内に一歩足を踏み出した時、沙耶は倒れた。


騒然とする教室。


保健室に連れて行こうとしたタクを廊下で止め、健ちゃんが冷静に言った。


「担任に内緒で…
俺達だけで、病院に連れて行こう」


「え、病院?
なんで?
担任に内緒って…」


沙耶を抱きかかえたまま固まったタクに、理由を告げることなく、健ちゃんは歩きだした。


「ここからなら、若葉中央病院が一番近い。
タクシー呼ぶぞ」