天使のキス。

「大丈夫よぉ、愛里」


…って、何がどう大丈夫なの?


ママになんか、任せておけない。


受話器をガシャガシャっと落としながらも、乱暴に引っつかむ。


「だって、悠くん。
“絶対行かねぇ。
親父の思い通りにされてたまるかっ!”
…って、大声で叫んでいたもの~」


「…え?」


今まさに1のボタンを押そうとしていた指が止まる。


「パパもママも呆気にとられちゃってねぇ。
でも、まぁ。
そのうち帰ってくるんじゃない?
…って、悠くん。
うちの子じゃなかったわねぇ。
おほほほほ…」