赤い狼 参









「稚春、泣いてたねぇ~。」




また沈黙し出した空気を今度は奏が破る。




でも、奏の言葉によって部屋の中はもっと静かになった。




それは多分、皆思ってたに違いねぇ。




俺だって思った。




だって、いつも笑ってる。



出会った最初よりは確実に稚春は、笑顔が増えてきたと思う。




これは勘違いでは無く、確かに。




でも、時々すげぇ哀しそうな顔をするんだ。




泣きそうな、目を。



そういう時は決まって唇を噛み締めている稚春。




泣いてもぃぃってのによ。



我慢なんかしてんじゃねぇよ。



なのに、祐って奴の前では簡単に泣きやがって。



しかも、あんな安心きった顔。



初めて見た。






拳をギュッと強く、握りしめる。




「稚春の名字って確か、白兎だったよな?」




声のした方に顔を向けると拓磨がこっちを見ていた。



稚春の名字?



何だってそんな事聞いてくるんだ?




「そうだ。それがどうした?」



疑問に思いながらも質問に答える。