「稚春、泣いてたねぇ~。」
また沈黙し出した空気を今度は奏が破る。
でも、奏の言葉によって部屋の中はもっと静かになった。
それは多分、皆思ってたに違いねぇ。
俺だって思った。
だって、いつも笑ってる。
出会った最初よりは確実に稚春は、笑顔が増えてきたと思う。
これは勘違いでは無く、確かに。
でも、時々すげぇ哀しそうな顔をするんだ。
泣きそうな、目を。
そういう時は決まって唇を噛み締めている稚春。
泣いてもぃぃってのによ。
我慢なんかしてんじゃねぇよ。
なのに、祐って奴の前では簡単に泣きやがって。
しかも、あんな安心きった顔。
初めて見た。
拳をギュッと強く、握りしめる。
「稚春の名字って確か、白兎だったよな?」
声のした方に顔を向けると拓磨がこっちを見ていた。
稚春の名字?
何だってそんな事聞いてくるんだ?
「そうだ。それがどうした?」
疑問に思いながらも質問に答える。

