「大丈夫か、稚春。」
「が…く。」
司を私から遠ざけた学の真っ黒な髪の毛がサワサワと私の頬に触れる。
その瞬間、学のつけている香水の匂いが私の鼻を掠めた。
「学…学、が…く。」
「怖かったな、こっちおいで。」
眉を下げて両手を広げてくる学の腕の中に、飛びつくように入る。
すると、学の香水の匂いが私の体を優しく包んだ。
「こわ、か…た。」
「あぁ、もう大丈夫だ。」
「学…っ。」
大きな手で背中を擦ってくれている学にすがり付くように、学を強く抱き締める。
怖かった、怖かったよ。
そう思いながら学に抱きついていると私はある事に気付いた。
「学…、走ってきたの?」
学の顔を下から覗くと学は
はぁっ…。
と大きく息を吐いた。
「探した。」
私の体を学が離し、肩を掴んで私の目をジッと見てくる学。
その真っ直ぐな瞳に見つめられると何だか恥ずかしくて逃げたくなる。
そう思いながらも私も学を見る。
汗ばんだ髪の毛や服。
上がる息。
焦った表情。
体が痛い筈なのに、私を必死に探してくれたのが分かる。

