「う、そ…。」
私の小さな驚きの声が静かな部屋に響き渡る。
「嘘じゃねぇよ。"白兎コンポレーション株式会社"の社長令嬢さん?」
ニコリ、綺麗に笑った司の瞳には私の驚いた顔が映っている。
こいつが?
私の婚約者?私はこんな奴と結婚するの?私の、夫になるの?将来を共に過ごすの?
ただの、金ごときで?
ガラガラと、何かが崩れていく音がした。
でも、私は泣かない。いや、泣けない。こんな奴の前で泣くもんか。
「やっぱり知らなかったんだな。」
ハッと乾いた笑いを漏らして私を鋭く睨む司。
その司の目に一瞬、怯んだ。
「俺はお前が嫌いだ。」
司が私の胸ぐらを掴む。
「金持ちの家でぬくぬくと育ってきたお前がな!」
司が大きな声で怒鳴って腕を振り上げた。
殴られる!
そう思い、咄嗟に目を閉じる。
…………?
でも、くる筈の痛みがこなかった。
疑問に思いながらも恐る恐る目を開ける。
すると私の目に入ってきたのは司ではなく
「…ぶねっ!」
さっきまで大丈夫かと私が心配していた学だった。
学は私と司の間に割って入って司の拳を手で受け止めている。

