確かに、雷太とかが時々部屋を訪ねてくる時がある。
でも、その話し声は聞こえた事がない。
きっと、それは私が聞きたくないと思っているのを《SINE》の皆が分かっているから。
現に私は《SINE》がIT会社を設立してやっている事と、関東統一している事しか知らない。
直接私に"気を使っている"と言ってきてないとしても、
私が《SINE》のそういう事について何も知らないという事は、
皆が私の耳にそういう情報が入らないように気を使っているという事だ。
なんて事だ。今更、この事に気が付くなんて。
その場で頭を抱えて落ち込む。
そういえばこの前、棗が顔に擦り傷を作ってきた事があった。
「その傷、どうしたの?」
って聞いたら、
「猫に引っ掻かれた。」
って言ってたっけ。
あの時はそれで納得しちゃったけど、考えれば分かった筈だ。
だって、確か棗は猫が嫌いだった。
泣きそうになる。
とても、切なくって。
過去の記憶を振り返れば振り返る程、あの時も、あの時も。と気を使わせていた事が分かって。

