「優悪、どけ。」




なのに、この男ときたら。



優しい優しい、神と思われる優悪の腕を掴んで何処かに退けようとする悪魔拓磨。



本当、悪魔だ。



優悪の"悪"を愛情の"愛"にして、拓磨の"磨"を悪魔の"魔"にしてしまいたい。




目を閉じてそう強く願っていると…




「…じゃぁ、ペナルティだ。」



「ペナルティー?」



拓磨がぃぃ考えが思い付いたという表情で私を見つめてきた。



でも、私は勢いよく後退る。



だって、嫌な予感しかしない。



ジリジリと薄笑いをしながら近付いてくる拓磨。



それから逃げるようにして後退る私。




その様子はまるで、蛇に睨まれているが、後退りが出来る蛙のようで。



私のすぐ側で優魔がブッと噴き出す音が聞こえた。




こら、てめぇ。笑ってんじゃねぇ。


私は大変なんだよ!必死なんだよ!




そんな気持ちを込めて優魔をキッと睨む。




多分、それがいけなかった。




さっきまで肩を震わせて笑っていた優魔が無表情で近付いてきて。





「ぃぃ度胸してんじゃねぇの、稚春。」





ガシリ、肩を掴まれた。