「あのね…、私の勘違いなのかもしれないんだけど…」




そう言いながら瞼を伏せる稚春の横顔は、酷く綺麗だ。




潤っている稚春の瞳を見つめる。




悲しそうな顔をしている筈なのに綺麗だと思うなんて、おかしい。



でも、本当に綺麗に見える。



何故だろう。



前にも、そう思った事がある。



この子、心の底から笑ってないな。と思った事が。



その時も、寂しそうな、悲しそうな顔をしていた。



なのに俺は綺麗だ、なんて思ったんだ。



あの時も、伏せ目がちな稚春の横顔を見て。




儚げに散っていきそうな姿を。




そう思っている間にも、稚春はさっき泣いた原因をポツポツと話す。




その言葉は、俺にしっかりと向けられていて。



稚春はこうやって心の内を打ち明ける事が出来る人を今まで、持っていたのだろうか…――




そんな考えがふと、頭を過る。



ただ、本当にふと、浮かんだ。



稚春の、ぎこちない喋り方。



何から話してぃぃのか時々悩んで頭を捻る、その仕草。




全てが俺の何かに引っ掛かって。





多分、こういう事をする機会がなかったんだな。と勝手ながらそう思った。