そして、その手は私の顎をクイッと持ち上げる。
それによって棗と私の目線が合う。
棗は真剣な眼差しをして
「稚春…俺、お前の事……っ、」
何かを言い掛けて止めた。
…?
頭に?マークが浮かぶ。
私が何?
不思議に思いながらも棗を見つめると
「フッ、やっぱり鈍感…。」
棗が聞き捨てならない言葉を吐いて顔を私に近付けてきた。
…これは…
ヤバい。
逃げようと思ったのに、逃げられない。
体が、何かの魔法に掛かったように固まってて。
嫌なら、逃げればぃぃのに。
駄目だ、駄目。
こんな事をしては。
脳にそう言い聞かせている間にも、棗の顔はどんどん近付いてくる。
私は、隼人の彼女なのに。
今、棗とキスしようとしてる。
こんなの、人間として駄目だ。
必死に、そう頭に言い聞かせたけど目の前には…
棗の顔が普通ではあり得ないくらい近くにあった。

