「でもさ……」

「えっ?」

「…そんな事してくれるなんて…奏くんめっちゃ男らしいやん…」

「……うん…」

「好きになったりとかは…」

「なっ、ないないない!!…そんなんないと思う……」


小春ちゃんが突拍子もない事言うから浮輪から落ちそうになった。

私が奏くんを好き……?


あんなにモテる人好きになるなんて…、身の程を知れって笑われる。

奏くんみたいな人は……









そう、美桜みたいな…。

美…桜……?



―ピーッ―


大きな笛がなって監視員のお兄さんが一斉に動き出した。

小春ちゃんに引っ張られて急いでプールサイドまで上がらされる。


水から出た体は鉛みたいにずっしり重くて、私の気分をさらに重くさせた。





「小春ちゃん―…、あのさ、美桜と奏くんってどう思う…?」

荷物を置いた木の下に向かいながら聞いてみた。

小春ちゃんは2人のあの雨の日の出来事を知らない。

だからこそ…、全然知らない人から見たらどうなのか。
聞いてみたくなったんだ。


「美桜と奏くん?…何でいきなりそうなるのかわからん。まぁ……、美男美女やと思うけど。……でもあの2人必要以上に話さんやん」

だから怪しいんだってば…。

思わず口から出そうになった言葉を慌てて押さえ込む。


何も知らない小春ちゃんから見たら…何でもない2人なのかな。

やっぱり私の考え過ぎ……?