「ところで……彼は…?」

お父さんが不思議そうに隣の奏くんを見た。

私ってば…。自分の事ばっかりで奏くんの説明全然しないなんて…。



「あの、彼は…」

「こんな格好ですいません。…オレ……あ、いや僕…華凛さんと同じ高校の本郷と言います。さっき偶然会いまして…、華凛さんの様子がいつもと違ったので……失礼ながらご一緒させてもらいました…」


お父さんに話をする奏くんはいつもと全然違う人みたい。

私をからかってる時の奏くんとも…、大笑いしてる時の奏くんとも…、励ましてくれた時の奏くんとも違う……。


初めて見る彼の顔。


「華凛さんの話…聞いてあげて下さい。僕なんかが言うのはほんま偉そうに聞こえてしまうかもしれんのですけど……。

……めっちゃお父さん想いの良い子です」

「…奏くん……」



真っ直ぐに私のお父さんを見つめる彼の横顔を…。
私は絶対に忘れないと思う…。

ううん……、忘れちゃいけないんだ。




こんなにも誰かの為に一生懸命になれる人。

とても真っ直ぐな人。






やっぱり今日…奏くんに会えて良かった…。