そしてあっという間に夏休みがやってきた。


あれだけ嫌がっていても月日は流れるもので…。

今日はお父さんの恋人と会う日になっていた。




「お父さんもアツも準備出来たん?」

「出来てるって言うたやん…お姉ちゃん待ちやで」

「嘘?ごめん、ごめん!」


13時にホテルのラウンジで待ち合わせ。
ソファーに座る2人に謝って車に乗った。

家から車で10分走れば着くそこは…、普通じゃ絶対に来ないような豪華な所。


お気に入りのワンピースにボレロを羽織って、お母さんのコサージュをバックにつけた。












夕べは緊張しすぎて……眠れなかったんだ。

このままでいいの?って気持ちと、お父さんの笑顔を見たいって気持ちが混ざり合って…、もやもやしたまま朝を迎えた。


「さぁ、2人共降りて」



ホテルの駐車場に車を止めて約束のラウンジに向かう。

いつもより口数の少ない私に気を使って、お父さんが彼女の説明を始めた。






「今日会わせたい人はな…、琴美さん言うてお父さんの取引先で出会った人やねん。
すごく……ええ人でな。大切にしたいと思うねん」



瞳を細めるお父さんが…別人に見える。

琴美さんを大切にしたいって言う。
お母さん以外の人を名前で呼ぶ。


私の知らないお父さん……。


「でも何度も言うようにお前達が嫌なら止めてもええねん……琴美さんもわかってくれてるしな」



胸が焼けるように痛かった。
お父さんが話す一言一言が心の中をボロボロにしてく。



痛い……、痛いよ………。