ザーッていう風が吹いて桜の花びらが舞った。
せっかく入学式までもってくれた桜だったのに…。そんな思いがありながらも、見事に散っていく光景がまるで映画の1シーンみたいで足が止まる。
「…綺麗やなぁ……」
早起きしてブローした肩までのボブが揺れてる。
右手で髪を押さえながらピンク色の木をボーッと眺めてた。
―キーンコーンカーンコーン―
チャイムの音にハッとして腕時計を見たら時間はギリギリ5分前。
急いで正門までの道を走る。
蓮見 華凛 (ハスミ カリン)
高校1年生。…正式には今日から高校1年生。
そう…。私は入学式早々遅刻しそうになっている所。
マイペースな性格のせいか時間も気にせず歩いてたらこんな事態になっていた。
私が入学した高校は都心部から少し離れた場所に位置していて、暖かい空気が漂っている。
今年で創立50周年で旧校舎を一部残して新校舎が建てられたっていう中々立派な学校だ。
新校舎を抜けて体育館に向かう為、正門から続く真っ直ぐな桜並木を猛ダッシュで駆け抜けたら…
学校にはあってはならない香りがした。
普通の日だったらわからないかもしれない。
でも…、今日の風の強さのせいか、私の鼻がいいのか。
時間がないってわかってるのに、心とは反対に足が勝手に動き出す。
体育館とは別の方向に小さな道場があった。
匂いはそこからきてる気がする。