甘きゅん【完】

そう、今の今まで。


颯斗に邪魔されるまで、夢中で見ていたテレビドラマの中の男の子と――…


今、あたしを意地悪そうに見下ろすそいつは、同一人物ってやつで。


「べ…べ…別に…」


とか、慌てて両手を振り、


「なんで、あたしが…
颯斗のドラマなんか…」


テレビの中と同じその顔に向かって、憎まれ口を言いながらも――…


「あれ?柚月。
おまえ、顔赤くねぇ?」


――そう。


颯斗に指摘される通り。


さっき想像したことは、簡単には消せなくて――…


「なんだよ、柚月。
俺とのキスシーン、想像しちゃった?」


大きな歩幅で部屋に入ってきて、さっきあたしが放りだしたらくだのぬいぐるみを叩きながら拾い上げる颯斗の姿に、さらにぼわわ…っと、体中が熱くなった。