隣町の彼は、



ふ、と名前を呼ばれて振り向く。




「また撮ってるの?」




太陽に照らされている、少し跳ねている栗色の髪。

生まれつき焼かれない、白い肌。

バスケット部の補欠なのに立派すぎる、筋肉質な腕や足。

笑った時に出来る、小さな笑窪。

そこらの植え木とあまり変わらない、186センチの身長。

まっすぐな瞳。

あの、太陽のように温かい笑顔。


低くて甘くて、優しい声。





「よく飽きないな」





その声を聞くだけで、一言呟くだけで、分かるの。



 君の全部



見なくても、鮮明に、鮮明に。頭に勝手に描かれて…。

あたしを独占する。




風はザーッと優しく吹き、あたしの髪を絡ませる。

桜の葉は、風に浚われどこかへ落ちて消えていく。




真っ赤な顔は、君と太陽のせい。

早い鼓動は…君だけのせい。